谷亮子(とか)のすごさ

僕はサッカーを観るのが好きで、ひいきとしているチームはスペインリーグのバルセロナバルサ)だ。ロナウジーニョが所属するクラブである。
今晩(日本時間明日早朝)、強豪バレンシアとのアウェーマッチがあり、ここで勝てればほぼ優勝が決定という事で、無意味に僕が気合いを入れている。明日の会社を休むくらいの気合いである。その入り様はいかばかりか。
ここ何年も低迷していたバルサだが、昨年からのチーム改革が奏功し、いまでは「欧州で最も魅力的なサッカーをするチーム」と言われるまでになっている。日本のメディアで取り上げられる回数も増えてきて、コンビニにバルサが表紙のサッカー雑誌が3冊並ぶほどだ。各選手のインタビュー記事も多く、そこでは「勝者のメンタリティ」という言葉がよく使われる。
どういうわけか日本のスポーツ選手からはあまり出てこないが、海外では必ずと言っていいほど出てくるこの言葉。前に読んだデコ(バルサのMF)のインタビュー記事でも、バルサを評して「勝者のメンタリティを持つチーム」、ロナウジーニョを「生まれながらの勝者」と言っていた。
「勝者のメンタリティ」とは、簡単に言えば「勝ちを知っているか」、という事である。勝った経験の無い者は、本当の苦境に追い込まれたとき、自分たちの勝ちを信じる事が出来ない。
逆に勝者は、絶望とも言える状況下でも、自分たちの勝利を確信してプレー出来るのだ。もっと適切に言えば、自分たちが負けるなんて思えないのである。このメンタリティを、海外のアスリート達はものすごく重要視している。
さっきまでF1スペインGP(偶然にもバルセロナで)が開催されていたが、この世界のチャンピオンであるアラン・プロストは「ドライバーは、一勝するだけで大きく成長し、まったく違うドライバーになる。ドライビングしていても、見える景色が違うようになる」とまで言っている。勝ち方を知る、というより、トップレベルで勝てる自分を信じられる、という事だ。
僕は高校の時にラグビー部に所属していて、これがなかなかに強いチームだった。いわゆる、名門校である。
県内ではほとんど負ける事が無く、僕たちの前学年から遡ると、県大会では、準優勝・優勝・優勝・準優勝・優勝といった具合である。身長が高いだけでヒョロりとした僕がレギュラーなくらいだし、練習時間も実業校の四分の一以下で、普通は勝てるわけが無いのだが、「負けるはずが無い」と思ってプレーしていた。それはやはり、自分たちの着ているジャージが「勝つ」場面を見続けてきたからであり、事実、勝ってきたからである。
これは甲子園においても、絶え間なく選手は入れ替わるにもかかわらず、名門校の多くが勝ち進む要因のひとつだと思う。
こういった「勝者のメンタリティ」は、意識してないだけでけっこう幅をきかせていて、例えば、二世芸能人。これが案外と成功するのは、「親が成功し続ける姿を見てきた」、この要素は無視出来ない。成功する自分を信じる事が出来る、この思いはかなりのアドバンテージで、越えられない壁にすらなっているかも知れない。
最近の長嶋一茂を見ても、本当にそう思う。彼はどの場面でも、自分を出すだけで受け入れられる、そう確信しているかのようだ。
さて、話題はバルサに戻るが、このチームは非常に若いチームであり、前回の優勝を経験しているのはチャビだけ。一時は独走でのリーグ制覇と思われていたが、終盤に来て二位のレアル・マドリー(まさに勝者の集団)が怒濤の7連勝で追いすがっている。バルサは自分たちのサッカーをすればいいのだが、このプレッシャーの中、どこまでいつものサッカーができるのか。
真の「勝者」となるため、若いチームは産みの苦しみを味わっている真っ最中だ。ということで、僕は会社を休んで応援するというわけだ。