未来は握りこぶしの中に

僕は東京都の台東区に住んでいるのだが、さっきまで「朝顔市」という夏祭りをやっていた。
ちょっと歩くと合羽橋でも七夕祭りをやっていて、こないだは有名な三社祭でうちの目の前を御神輿が通り過ぎたりしている。
とにかく、夏祭りが多い地域なのである。
そのたびに僕は「元祖ベビーカステラ」を購入し、高カロリーを摂取してよろこんでいる訳だが、ぎゃくに言うと、ベビーカステラを買うくらいしか祭りに用が無かったりする。
思い出してみるに、子供の頃って縁日の夜店を歩いているだけで、鼻血が出るほど楽しかった。
一心不乱に「型抜き」を針でガリガリやったり、がっつくあまりクレープのクリームを口の周りに付けたりしたわけだ。
中学生くらいになると、友達と連れだって行ったり、あわよくば好きな女の子を誘って・・・なんつー野望を抱いたりする。
都会で育った人は分からないかも知れないが、田舎の中学生カップルというのは、絶望的にする事が無いのである。
なにしろ、遊びに行くところが無い。
僕は新潟県のド田舎で育ったのだが、なにしろ家から一番近いコンビニまで車で10分以上かかる。
家に遊びに来てもらうにも、たいがい年寄りが常駐している上、うちのじいちゃんに至っては、アル中で見えないハエをハエ叩きで追っかける始末。
さらに、便所はボットン便所。一番身近な奈落の底である。
そんな家がほとんどだから、付き合う→することがない→付き合う意味がない、となってしまい、長続きしないのが田舎の恋愛事情というものだ。
そこに、まさに一夜にして出現するアミューズメントスポット、縁日。気合いが入らないわけが無かろうか。はいらまいでか。
んで、大好きだった未央ちゃんを誘い、自転車を並べて楽しく祭りに行ったんだけど、地元のヤンキーに絡まれて、尻をしたたかに蹴られ、尻尾をまいて逃げようと戻った自転車の空気は抜かれている大惨事。ド田舎の祭りはヤンキーの主戦場。
あの時僕は思ったね「男はなんだかんだ言っても腕っ節」。
この認識は今でも変わってないんだけど、今日の祭りでそんな事を思い出して、あの時「強い男になろう!」と固く決意、ダンベルを買ったりシャドウボクシングをしたりしたなあ、オレは強い男になったのかなあ、と、こぶしを強く握ろうとしたら、その手にはベビーカステラ。元祖。