泳げ肉まん君

僕はコンビニによく行く。プリンが好きだからだ。
最近、とくにプリンのバリエーションが豊かになってきて、豆腐プリンとか、牛乳プリンとか、はてはヨーグルトプリンなんていうどっちつかずなものすらあったりして、プリンコーナーは活況を呈している。
その中でも一番えらそうなのが、生クリームがのっかったプリン。「わたくし、ただのクリームじゃございませんの。生でございますのよ」なんつって「ざます調」なたたずまいだ。名前も、「ラ・ポンム」とか、女性冠詞がついたりして、日本人消費者を混乱に誘う。
偉そうといえば、僕の家に一番近いのがローソンなんだけど、そこの女性店員がすごく偉そうなのである。
なんの断りもなく、生クリームプリンと温めたカツ丼弁当を同じ袋に入れ「熱いざます!」と僕とプリンを憤慨させたりする。
また、ローソンでは肉まんを買うと、なんていうか、肉まん用の袋の両端を持ち、クルクルッっと前後に回転させることにより、両端をねじって密封してくれる。
この、クルクルッがやたら得意げなのだ。この店員は。
やにわに肉まん袋の両端を持つと、胸の前で手首のスナップのみでクルクルッとする。もう、肉まんが秒間5回転はする。クルクルクルルルッだ。残像が見える。そんな勢いでするもんだから、中の肉まんが遠心分離器にかかったようにひしゃげてしまう。
だから、僕はその店員の時には肉まんを買わない。
そんな事とはつゆ知らず、僕の前の並んでいたハゲのおっさんが「吟醸肉まん」という最高級で大ぶりの肉まんをオーダーした。
僕は「あー、あー」と思いつつも、その店員の手先に注目。
店員はいつものように、無表情のまま「吟醸肉まん」を袋に入れ、ハゲオヤジの前でクルクルクルッ!と回した。
その瞬間、勢い余って袋の底が抜け、ハゲオヤジの顔面に「吟醸肉まん」がマッハの速さでメガヒットしたのである。
オヤジの顔に張り付いた「シイタケ」が、事態の深刻さを物語っている。そこだけ時間が止まったかのようだ。
ただ、僕は耐えきれなかった。「ブボボッ!」とこみ上がってくる笑い。となりのレジの店員も、呼応したかのように「グブブッ!」と吹き出している。
僕とその店員はしばらく寄り添って腹を抱えていたため、その後の彼らを確認できなかったのが心残りである。いい汗をかかせてもらった気分だ。