大地が揺れて、心も揺れる

僕は東京在住なのだが、最近やたらと地震が多い。今日も揺れた。
地震が起きると「揺れてる!」とか「地震だ!」とか言ってパニックとなるひとがいるが、そんなものは言わなくても分かっている。こういう人は歩いていても、目に入った看板の文字を無意識に口に出してしまうのだろう。「毎週水曜日は餃子デー・・・か」
僕は基本的に、パニック沸点が高い方だと思う。
ちょっと分かりにくいか。つまり、そうそう簡単にパニックにならないってことが言いたい。パニック沸点なんていう言葉を作った事が間違いだった。でも、もったいないから使う。パニック沸点。たいして画期的じゃないな、我ながら。
だから、地震が来たとしても、その揺れが常軌を逸しない限りまったく動じない。むしろ、地震に対してリアクションをとってしまう事が恥ずかしいとすら思っているフシがある。
その地震発生時のリアクションのお話。
クールビズが強制的に一般化されたこの8月某日、あまりの暑さに同僚の小泉さんが「暑すぎる!さすがにエアコンの温度設定間違ってるんじゃないですか?」と憤慨し、オフィスの端っこにあるエアコンの温度設定を見に行った。というのも、クールビズ施行以降、僕たちのエリアのエアコン設定が34度というまるで見当違いな設定になっている事が頻発していた。これを僕たちは「総務の陰謀」と呼んで警戒していたのである。
僕も手を休め、ウチワを使って涼をとっていると、グラグラッと来たのである。これは結構な揺れだ。周りは案の定「地震だ!」などと、そのまんまな発言を繰り出して慌てている。
いつもは平静を装う僕だが、その時の揺れはいつもより激しかったのと、僕の目の前に鎮座していて、山田課長が大切にしているイチロー陶器人形が揺れに堪えきれず床に落ち、首がもげてしまった事で幾分か慌てていた。
哀れなイチローを僕がへっぴり腰で救出しようとしているところに小泉さんが戻ってきて、「やっぱりエアコン34度でしたよ!」との報告。
「すげー揺れてる!」「ぎゃああ、イチローが!」「おおお、書類が崩れる!」と小パニックが起きる中、ひたすら「34度だって!」とエアコンの温度を報告する小泉さん。
そして誰も聞いていない。
僕はイチローの首をアロンアルファでくっつけながら、小泉さんはいいなぁと思った。