頭の中を見てみたい

山本さんが倒れた。
山本さんは、オフィスで僕の隣に座っているおじさんである。
声がでかくて、クラブのママに400万貸していて、最近電柱と激闘して小指を骨折した。
そんな山本さんが、倒れた。
といっても、僕の目の前でバタリとなったのではなく、通勤中に電車のホームで倒れたらしい。
うちの会社は、社内メーリングリストで個々の予定を報告することになっていて、遅刻とか有給取得もこれが利用されている。
今朝出社すると、そこに山本さんからのエマージェンシーメールが入っていて、

題名:山本無念
本文:「山本です。ホームで気分が悪くなり、救急車で搬送されております。よって、出社するのが午後くらいになると思われます」
送信者:ジュリー<*****@docomo.ne.jp>

深刻な内容の割に、オフィスのそこかしこで失笑を買っている。
その上、どこに重点をおいてリアクションすればいいのか、それぞれ個人で悩んでいるのが見て取れる。
昼休みの時間になって、僕が肉じゃが弁当を食そうとしていると、キムチ弁当を持って山本さんが出社してきた。
「ウマクビ君、ちょっと見てくれよ!」
と、山本さんが出したのは、自分の脳みそのCTスキャンである。
肉じゃがをつまむ僕のハシが止まる。
気にせず山本さんは、キムチ弁当をバクバク食いながら、「ここが視床下部、んで、大脳新皮質」などと、人体の神秘を語り始めた。
「でも、大丈夫なんですか?」と聞くと、
「フィジカル的には大丈夫」と、よく分からない回答。
お昼休み中、自分の脳みそを見せて回った山本さんは、午後から「大事を取って」休んだ。
お大事に、ジュリー。