世界最大のミミズ

稲村さんと苦手な生き物について話していて、僕は「クモ」と主張した。
トラグモだかオニグモだか分からないのだが、大きさは15センチくらいで、黄色と黒の縞模様になっている阪神ファンのようなクモがいる。
僕は子供の頃に山道を歩いていて、トラグモの巣に思いっきり顔を突っ込み、目の前が黄色と黒の縞模様になったという身の毛もよだつ経験をしているのだ。
それ以来、虎も嫌いならば阪神も嫌い。四肢を広げて何かに張り付いている物も嫌いである。
稲村さんはというと、「ヘビ」及び「ミミズ」だそうだ。
ニュージーランドに行った折、ベンチに腰掛けていたら、脇の穴から3メートル超のミミズがはい出してきて、腰を抜かして脱糞したとの事である。
「いや、ほんとに3メートル半はあったね、太さは、ボンレスハムくらいかなぁ」
等というのだが、それはもはやモンスターである。
にわかには信じられない発言だったので、早速ネットで調べてみたら、南アフリカで体長45.7メートル、太さが4.57メートルのものが発見された、という報告があったとのこと。
ニュージーランドにも、2メートルから3メートルくらいのミミズの存在が確認されているみたいである。
「そんなでけえミミズがいるのか!」
と稲村さんは素直に驚いていたので、「あんた見た事あるんだろ」と問いつめていたら、
「いや、でかかったな、あのミミズは。1メートルは余裕だった」
と、いつの間にかスケールダウンしている。当初から2メートル半ほど縮んでいるではないか。手で示している太さも、魚肉ソーセージほどになっていた。
そういや中学校の頃、同級生が「あの池の主(ぬし)を見た!」と、手をいっぱいに広げて自慢していたが、これも問いつめているウチに、だんだんと広げた両手を縮めていった。
こういのを、釣りのがした魚は大きいっていうんだっけ。ちょっと違うか。
そんな話の途中に、山本さんが割り込んできた。
山本さんは「オレが一番苦手な生き物は、女だ」と言い出した。
僕と稲村さんは「まさしくその通り」と深く頷き、その話を聞いた。(長くなったので、つづく)