アバウト・ア・ボーイ

アバウト・ア・ボーイ(02米)を観た。
これもBadlyDrawnBoyのサントラを先に買っていて、いつか観ようと思っていた作品だ。
主人公は38歳の独身男ウィル(ヒュー・グラント)。かっこいい。
親の遺産で暮らし、仕事も持たず、妻もいない。ロンドンのおしゃれな地域のおしゃれな住まいに、これまたおしゃれなインテリアに囲まれて、最新型のポルシェを乗り回す。そしてかっこいい。だからもてる。そして、後腐れのないナンパに精を出す。
もはや人類の最終形態の様なライフスタイル。
「所詮、人間は誰でも孤島」と人生を諦観し、シングルライフを謳歌しているのである。
しかし、悩み多き12歳の少年マーカスとの出会いが、そんな彼を「孤島」から引きずり出す。
人間同士の絆、家族、思いやりなど、自分の人生に無かったものに気づいていくウィル。
そして、最も自分に縁の無かった「責任」を意識し、ようやく「オトナ」になっていく。
といった感じのストーリー。
事件をトリガにして主人公の心が開いていく構成で、すんなり楽しめるいい作品だと思う。
とはいいつつ、ウィルの生活がかっこよすぎて、その中にある「孤独」に共感しにくい部分はある。
なにせ、僕のようなサラリーマン(独身安月給)からすると、うらやましい要素満点な訳だ。言ったら、憧れである。
しかし映画全体のトーンでは、そういうライフスタイルを「無責任」といった感じで否定的に捉えているため、「え?そうかな?」なんて思ってしまうのだ。
例えば、古いかも知れんが「シロガネーゼ」という人種。
主人は仕事が忙しくてほとんど留守。子供を慶応幼稚舎に送り出すと、イヌ(チワワとか。名前はアインシュタイン)の散歩ついでにおしゃれなカフェで一休み。そこには似たようなマダムが集まって・・・。
でも、その実、愛に飢えていたり、不意にむなしさを感じたり、波瀾万丈に憧れてみたり・・・。
そんな悩みを提示されても、「は?」と思うだけで、共感できる主婦の方々は少ないのでは無かろうか。
「愛は金で買えるんです!」なんて言い切ってみたり。
なんて思って観ていると、クライマックスが近づくに従って「いや、やはり人生は愛。家族、人間同士の絆」なんて思い返してみたりして、自分の人生観が難破船の様にグラグラ揺れる。
でも、そんな荒れ狂う海を鎮めてくれるのは、やはり人間の意志であり、決断である。
どうあれ、今まで流され生きてきたウィルが「孤島から出る」という決断をどうしていくのか。
そこをはっきり描いているから、最終的に面白かったと言えるのだと思う。