ぼくんち

西原理恵子原作の同名漫画を映画化。
まず言うと、僕は西原理恵子が大好きだ。とくに「ぼくんち」で見せる西原の世界観はすさまじい。「貧乏」とか「生きる」とか、とかく湿っぽくりがちなテーマを扱いつつ、それを突き抜けた「乾いた」ユーモアとカラフルな色彩が溢れる。まさに西原漫画の真骨頂。
とまあ、西原ファンの目線で見てしまうため、阪本順治監督は「原作通りを期待されても困る」と言ってたけど、こっちとしても困る。
確かに原作ものの映画を作るときは、監督としても脚本家としても、”なぜ「映画」という表現手法を使って「ぼくんち」を作るのか。映画と漫画という媒体の違いをどう出すのか。”ここを第一義に考える訳だから、原作そのままというのはどだい不可能な話ではある。
でも今作に限って言うと、やっぱり「乾き」っていうのがすごく大事だと思うんだけど、映画はどちらかというと「湿って」しまっているのだ。
「必死に生きる」という状態の表現を考えた場合、「必死」というのはさじ加減ひとつで「ユーモア」になり「悲惨」にもなる。それが今作では、「悲惨」に転んだ感じ。
「悲惨」の向こう側にある「明るさ」「たくましさ」を西原漫画に見ていたファンとしては、やっぱりちょっと不満なのである。
とまあ、原作ファンとして語ったけど、原作を未見の人なら面白いのかもしれない。
人間のごった煮感とか、新鮮な部分がすごくある。
ただ、やっぱり「悲劇」になっちゃたのはなあ。映画と原作、明らかに原作の方を見てもらいたいし。